締結後の緩み・軸力低下の課題と対策

目次

出荷時には規定の条件で締結されていたはずなのに、市場で緩みが発生する——自動車・鉄道車両・産業機械・エレベーター・回転機械など、振動や温度変化を伴う製品では、締結後の緩みや軸力低下が重要な品質課題となります。緩みは市場クレームだけでなく、製品の機能や安全性に影響する可能性もあります。

本記事では、出荷後の振動や温度変化、初期なじみなどによって起こるネジの緩み・軸力低下について、発生メカニズムと対策を解説します。

締結後に緩み・軸力低下が起きるメカニズム

メカニズム 起きている事象 主な発生環境
初期なじみによる軸力低下 締結後に接触面の微小な凹凸が変形し、軸力が低下する 粗面部品・塗装面など
振動による回転緩み 繰り返し振動によってボルトやナットが回転し、締結力が低下する 車両・回転機械・輸送機など
熱膨張差による軸力変化 温度変化によってボルトと被締結物の膨張・収縮量に差が生じ、軸力が変化する エンジン・パワーユニットなど
クリープ・応力緩和 高温環境や長時間の使用などによって締結部材が変形し、軸力が低下する エンジン周辺・炉周りなど
座面陥没 軟質な材料などで座面が沈み込み、締結力が低下する アルミ・マグネシウム部品など

課題への対策① 軸力管理をトルク法から高度化する

トルク法は締付け条件を管理しやすい一方、ねじ面や座面の摩擦係数などの影響を受けるため、同じトルクで締めても軸力にばらつきが生じる場合があります。軸力のばらつきが問題となる工程では、角度法やトルク勾配法など、用途に応じた締付け方法を検討します。

角度法

スナグ点(着座)を検出し、そこからの回転角度を管理する方法です。トルク法と比較して摩擦の影響を受けにくく、条件によっては軸力のばらつきを抑えられます。ただし、締結部の仕様や締付け領域によって適用条件が異なるため、対象となるボルトやワークに合わせた設定が必要です。

トルク勾配法

トルクと回転角の関係を監視し、締付け中のトルク勾配の変化から締結状態を判定する方法です。締結状態を確認しながら管理できるため、重要な締結工程などで軸力の安定化や締結異常の検出に活用されます。具体的な管理方法や締付け領域は、ボルトやワークの仕様に応じて設定する必要があります。

超音波による軸力測定

研究開発や重要な締結工程では、超音波でボルトの伸びを測定し、軸力を直接管理する方法もあります。量産工程への適用事例もあるため、特に高い軸力管理精度が求められる場合には選択肢のひとつとなります。

課題への対策② 締結条件を初期なじみに耐える設計にする

初期なじみによる軸力低下は、締結条件や部品側の設計を見直すことで抑制を検討できます。

課題への対策③ 増し締め工程を自動化する

エンジン組立や電池パックなどの製造工程で、締結後の軸力変化を考慮して増し締めを行う場合は、増し締め工程を自動化することで、作業者による締結条件や対象箇所のばらつきを抑えやすくなります。

課題への対策④ 緩み止め要素と自動締結を組み合わせる

締結後の緩みを抑えるには、締付け方法だけでなく、設計段階で緩み止め要素を組み合わせることも重要です。

これらは製品の設計要件や使用環境に応じて選定する必要があります。自動化ラインで採用する場合は、供給機や締結ツールとの互換性、締結条件への影響などをメーカーに確認しましょう。また、ダブルナットなど複数の部品を組み合わせる締結では、専用の供給・締結機構が必要になる場合があります。

導入ステップ

  1. 対象工程の軸力管理要求(設計要求)と、市場での緩みクレーム履歴を整理する。
  2. トルク法・角度法・トルク勾配法など、どの締付け方法で管理するかを設計・品質保証部門と合意する。
  3. 締結後の軸力変化などを確認し、増し締め工程の要否を検討する。
  4. メーカー各社に対し、選定した締付け方法や増し締めへの対応可否を確認する。
  5. 実機トライアルで、締結後の軸力保持性能や締結状態を検証する。

編集チームまとめ

締結後の緩み・軸力低下は、設計・締結条件・工程管理の3つの観点から総合的に対策する必要があります。自動ネジ締め機では、角度法やトルク勾配法などによる締結状態の管理、段階締めの自動化、増し締め工程の組み込みなどが対策として検討できます。

ただし、自動ネジ締めによって市場での緩みを直接防止できるわけではありません。必要な軸力や締付け方法、緩み止め要素などを設計段階から検討し、量産立ち上げ前に締結後の軸力保持性能を検証しておくことが重要です。

ワークとねじサイズから見つかる!
おすすめのネジ締め機3選

ネジ締め機を選ぶときには、“どのサイズのねじを締めるか”が重要な判断基準です。
そこで、当メディアではねじ締結を行いたい対象製品(※以下、「ワーク」と表記)とねじサイズの2軸から、ワークに応じて適切なねじ締めができる3機種を厳選しました。ネジ締め機の特徴を比較し、自社の製造現場に合った1台を見つけてください。

スマートフォンや
車載電装品などに使われる
小ねじを締めたい

想定ねじサイズ:M0.4~M3(※1)
ABLシリーズ
日本テクナート
ABLシリーズ
画像引用元:日本テクナート公式HP(https://www.technart.com/)
対応トルク参考値
0.002~13.2N・m
こんな製品におすすめ
スマートフォン/車載電装品/医療機器/半導体部品
ココがポイント!

精密機器や狭小部品のねじ締めを想定した軽量・小型の構造により、細かい部品の組み立てや狭小空間での作業にも対応。

ねじ1本ごとにスリーブやビット(※2)を設計し、トルク値を精密にコントロール。微細な部品でも不良や製品破損を低減。

家電製品や
PCパーツなどに使われる
定番サイズのねじを締めたい

想定ねじサイズ:M4~M5
HMシリーズ
デンソーウェーブ
HMシリーズ
画像引用元:デンソーウェーブ公式HP(https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/screwtightening/STR.html)
対応トルク参考値
1.0~4.0N・m
こんな製品におすすめ
家電/PCパーツ/自動車組み立て部品/事務機器
ココがポイント!

定番サイズのねじ締めに最適化されたビットやトルク制御で、ノートPCや樹脂製筐体でも破損リスクを抑えられる。

最大6,000rpmの高速ビットと自動ねじ供給システムにより、家電・PCパーツの量産ラインでの作業スピードが向上。

建機や
車体などに使われる
大型・高トルクねじを締めたい

想定ねじサイズ:M6~M12
THL900-EN01
エスティック
THL900-EN01
画像引用元:エスティック公式HP(https://www.estic.co.jp/products/)
対応トルク参考値
1.0~100.0N・m
こんな製品におすすめ
工作機械/産業機械/自動車のエンジン部品/航空機の機体構造部材
ココがポイント!

最大100N・mの高トルクのため、自動車のサブフレームや建機の構造材など汎用モデルでは難しい大型ねじの締結が可能。

高負荷領域でもトルク制御・ねじ締めデータの記録精度を維持でき、構造部品に求められる品質基準もクリアできる。

※1 ねじサイズについて「M0.4」と表記していますが、正式なJIS規格(JIS B0201)では「S0.4×0.1」が正確な呼び方です。本メディアでは一般的な呼称に基づき説明しています。
※2 ビットとは、ねじを締めるための先端工具のこと。スリーブは、ねじをエア吸着でピックアップするときに必要な部品のこと。
※このメディアでは、公式HPに記載されている数値や製品特性をもとに「想定ねじサイズ」と「対応トルク参考値」を定義・整理しています。実際の対応範囲の詳細については、各社のスペック表をご確認ください。

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