非磁性ネジの自動化における課題と解決策

目次

ステンレスや樹脂といった非磁性ネジはマグネットで保持できないため、自動化におけるネジ落ちやチョコ停が課題となります。本記事ではその原因を整理し、バキューム吸着やチャック方式など、解決策と設備選びのポイントを解説します。

なぜ非磁性ネジのネジ締め自動化は難しいのか?

マグネット(磁力)によるネジの保持ができない

ネジ締めの自動化において、鉄製のネジであればビット先端のマグネット(磁気)を利用して簡単に保持できます。しかし、ステンレスやアルミニウム、真鍮、樹脂、チタンなどの非磁性ネジは、磁力で吸着することができません。

そのため、通常のネジ締め機をそのまま転用しようとしても、ネジをビット先端で保持できずに落下してしまいます。非磁性ネジの自動化を検討する際は、「いかにしてネジを物理的、あるいは空圧的に保持したまま指定の座標まで運ぶか」という専用のアプローチが不可欠となります。

落下による部品破損やチョコ停発生のリスク

非磁性ネジの保持が不安定な状態のまま自動化を進めると、搬送中や締め付けの瞬間にネジが脱落するトラブルが多発します。ネジが製品内部に落下すると、電子基板のショートや物理的な傷の原因となり、製品の歩留まり低下に直結します。

また、脱落したネジを検知して設備が一時停止するチョコ停が頻発すれば、結果的に手作業よりも生産効率が落ちてしまう本末転倒な事態になりかねません。ネジをホールドし、トルクアップまで姿勢を崩さない保持機構の選定が求められます。

狭小部や深穴へのアプローチが困難になるケース

非磁性ネジを保持するための機構をビット周辺に取り付けると、ツール先端の体積が大きくなる傾向があります。製品の奥まった場所(深穴)や、周囲に壁や電子部品などの干渉物が存在する狭小部へのアクセスが物理的に困難になるケースが生じます。

手作業であれば作業者がピンセット等を駆使して斜めからアプローチできる箇所でも、自動機の場合は垂直にノズルを進入させるスペースを確保しなければなりません。製品設計と設備側の仕様をすり合わせる必要があります。

非磁性ネジを保持・自動化する解決策

バキューム方式による保持

バキューム方式は、真空ポンプやエジェクタを利用して、ビット先端や専用の吸着パイプでネジの頭部を吸い付けて保持する仕組みです。この方式のメリットは、チャック(爪)などの物理的な開閉スペースが不要なため、ツール先端を細く設計できる点にあります。袋穴や周辺に段差などの干渉物がある狭小部へのネジ締めに適しています。

デメリットとして、ネジの頭部形状によっては十分な吸着力が得られない点や、ホコリ・油分を吸い込んでしまい定期的なメンテナンスが必要になる点が挙げられます。

メカニカルチャック方式による保持

メカニカルチャック方式は、2つから3つの物理的な爪(チャック)を用いて、ネジの頭部や軸を外側から掴んで保持する仕組みです。メリットとしては、バキューム方式では吸着しにくい特殊な頭部形状のネジや、M5以上の比較的重いネジであっても、確実にホールドして落下を防げる点があります。また、ホコリや油分等の影響を受けにくいため、悪環境下でも安定して動作します。

デメリットは、爪がネジを離す(開く)ための物理的な動作スペースが必要になるため、狭小部や深穴での締め付けには不向きであることです。

その他の工夫

保持だけでなく、ネジを所定の場所まで運ぶ供給の工程でも工夫が必要です。例えば、ネジを所定の場所まで運ぶ工程での脱落を防ぐため、エアー圧送システムを併用するケースがあります。パーツフィーダーから整列されたネジを、透明なウレタンチューブ等を通して空気圧で一気にドライバー先端のチャック部まで吹き飛ばす仕組みです。

ロボットアームがネジを取りに行くピック&プレースの往復時間を削減でき、タクトタイムの短縮に寄与します。ただし、チューブ内でネジが詰まらないよう、ネジの軸長や頭径の比率が適切である必要があります。

編集チームまとめ

ステンレスや樹脂などの非磁性ネジは、マグネットが使用できないという特有の制約があり、落下やチョコ停、狭小部へのアクセスといった課題を引き起こします。これらの課題を解決し自動化を成功させるためには、「バキューム(真空吸着)方式」や「メカニカルチャック方式」など、各保持機構の仕組みとメリット・デメリットを正しく理解することが不可欠です。

まずは自社の製品形状やネジの特性、作業スペースの条件を整理し、環境に適した保持・供給方式を見極めることから始めましょう。

ワークとねじサイズから見つかる!
おすすめのネジ締め機3選

ネジ締め機を選ぶときには、“どのサイズのねじを締めるか”が重要な判断基準です。
そこで、当メディアではねじ締結を行いたい対象製品(※以下、「ワーク」と表記)とねじサイズの2軸から、ワークに応じて適切なねじ締めができる3機種を厳選しました。ネジ締め機の特徴を比較し、自社の製造現場に合った1台を見つけてください。

スマートフォンや
車載電装品などに使われる
小ねじを締めたい

想定ねじサイズ:M0.4~M3(※1)
ABLシリーズ
日本テクナート
ABLシリーズ
画像引用元:日本テクナート公式HP(https://www.technart.com/)
対応トルク参考値
0.002~13.2N・m
こんな製品におすすめ
スマートフォン/車載電装品/医療機器/半導体部品
ココがポイント!

精密機器や狭小部品のねじ締めを想定した軽量・小型の構造により、細かい部品の組み立てや狭小空間での作業にも対応。

ねじ1本ごとにスリーブやビット(※2)を設計し、トルク値を精密にコントロール。微細な部品でも不良や製品破損を低減。

家電製品や
PCパーツなどに使われる
定番サイズのねじを締めたい

想定ねじサイズ:M4~M5
HMシリーズ
デンソーウェーブ
HMシリーズ
画像引用元:デンソーウェーブ公式HP(https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/screwtightening/STR.html)
対応トルク参考値
1.0~4.0N・m
こんな製品におすすめ
家電/PCパーツ/自動車組み立て部品/事務機器
ココがポイント!

定番サイズのねじ締めに最適化されたビットやトルク制御で、ノートPCや樹脂製筐体でも破損リスクを抑えられる。

最大6,000rpmの高速ビットと自動ねじ供給システムにより、家電・PCパーツの量産ラインでの作業スピードが向上。

建機や
車体などに使われる
大型・高トルクねじを締めたい

想定ねじサイズ:M6~M12
THL900-EN01
エスティック
THL900-EN01
画像引用元:エスティック公式HP(https://www.estic.co.jp/products/)
対応トルク参考値
1.0~100.0N・m
こんな製品におすすめ
工作機械/産業機械/自動車のエンジン部品/航空機の機体構造部材
ココがポイント!

最大100N・mの高トルクのため、自動車のサブフレームや建機の構造材など汎用モデルでは難しい大型ねじの締結が可能。

高負荷領域でもトルク制御・ねじ締めデータの記録精度を維持でき、構造部品に求められる品質基準もクリアできる。

※1 ねじサイズについて「M0.4」と表記していますが、正式なJIS規格(JIS B0201)では「S0.4×0.1」が正確な呼び方です。本メディアでは一般的な呼称に基づき説明しています。
※2 ビットとは、ねじを締めるための先端工具のこと。スリーブは、ねじをエア吸着でピックアップするときに必要な部品のこと。
※このメディアでは、公式HPに記載されている数値や製品特性をもとに「想定ねじサイズ」と「対応トルク参考値」を定義・整理しています。実際の対応範囲の詳細については、各社のスペック表をご確認ください。

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