カムアウトの原因と対策

目次

製造業のねじ締め工程で発生しがちなカムアウトについて、その主な原因と有効なカムアウト対策について解説しています。また、カムアウト防止にはどんなネジ締め機を選べばいいのかについても紹介します。

カムアウトとは?

ドライバーやビットがねじの頭から滑って外れてしまう現象のことです。特にプラスねじ(十字ねじ)やトルクスねじなどで起こりやすく、ねじを締めたり緩めたりしている最中に、ドライバーがねじの溝をしっかりとかまず、力がうまく伝わらない状態になります。これにより、ねじや工具の損傷、作業効率の低下のリスクが高まります。

カムアウトが発生する
主な原因

押し付け圧が不足している

ねじを締める際にビットをねじ頭に押し付ける垂直方向の力が不足している状態です。回転力がねじに正しく伝わらず、ねじ頭から浮き上がるように外れて、ねじ頭を傷つけたり、作業効率の低下を招いたりする原因となります。

軸ズレ・傾き締め

ビットがねじ頭と平行または同軸になっておらず、斜めに当たった状態で締め付けを行うことです。トルクがねじに正しく伝わらず、横方向に逃げてしまうことで、ビットがねじ頭から外れやすくなり、カムアウトが発生しやすくなります。

ビット先端の摩耗・消耗

ビットが摩耗・消耗して、ねじ頭とのかみ合わせが浅くなり、ビットがねじから滑りやすくなる状態のことです。そのため、ビットの状態を定期的に点検し、摩耗が見られる場合には速やかに交換や調整を行うことが重要です。

ビットやねじの
サイズ・規格の不一致

ビットとねじが正しくフィットしていない場合に、トルクが一点に集中して滑りやすくなる状態です。特にJISとISOでは、形状や寸法に微妙な違いがあるため、規格を混同するとかみ合わせが不十分になることがあります。

カムアウトの対策方法

ビットを見直して
カムアウトを防ぐ

ビットの摩耗によるカムアウトが発生する場合には、刃先の硬度を高くすることで改善することができます。また、足場の悪い場所の締め付けでは、ビット側面のギザ部がネジに食い込む「ギザビット」を使うことで防止することが可能です。

ドライバーを見直して
カムアウトを防ぐ

押す力と回す力のバランスは、ドライバーのグリップ形状の影響も受けます。たとえば、グリップがボール形状の「ボールグリップドライバー」により、押す力7、回す力3の安定した締め付けでカムアウトの発生を防止することができます。

ねじを見直して
カムアウトを防ぐ

設計段階において、トルクの伝達性が高いネジを選定することにより、ビットとの噛み合いが向上し、カムアウトの発生を防ぐことが可能です。トルク伝達性に優れたねじには、トルクスねじや六角穴付きねじなどがあります。

カムアウトの悩みは
ネジ締め機で解決できる

カムアウト対策には、適切なトルク設定やねじに合ったビット調整が可能なメーカーの工具を選ぶことが重要です。専用ビットや高精度なビットを提供するメーカーの製品は、ビットの摩耗を防ぎ、作業品質の安定や効率の向上も期待できます。そのため、信頼性の高いメーカーを選ぶことが、長期的なコスト削減にも有効です。

手動でのトルク調整に不安がある方は、自動トルク設定機能付きのネジ締め機をチェックしてみてください。

トルクのばらつきを低減する
おすすめのネジ締め機3選

編集チームまとめ

カムアウトは、さまざまな原因により、ドライバーやビットがねじ頭から滑って外れる現象で、工具やネジの損傷、作業効率の低下を招きます。対策としては、摩耗しにくいビットや適した形状のドライバー、トルク伝達性の高いねじを選定することが有効です。また、トルク設定やビット調整が可能な高品質な工具を提供するメーカーを選ぶことで、より安定した作業環境が実現できます。

ワークとねじサイズから見つかる!
おすすめのネジ締め機3選

ネジ締め機を選ぶときには、“どのサイズのねじを締めるか”が重要な判断基準です。
そこで、当メディアではねじ締結を行いたい対象製品(※以下、「ワーク」と表記)とねじサイズの2軸から、ワークに応じて適切なねじ締めができる3機種を厳選しました。ネジ締め機の特徴を比較し、自社の製造現場に合った1台を見つけてください。

スマートフォンや
車載電装品などに使われる
小ねじを締めたい

想定ねじサイズ:M0.4~M3(※1)
ABLシリーズ
日本テクナート
ABLシリーズ
画像引用元:日本テクナート公式HP(https://www.technart.com/)
対応トルク参考値
0.002~13.2N・m
こんな製品におすすめ
スマートフォン/車載電装品/医療機器/半導体部品
ココがポイント!

精密機器や狭小部品のねじ締めを想定した軽量・小型の構造により、細かい部品の組み立てや狭小空間での作業にも対応。

ねじ1本ごとにスリーブやビット(※2)を設計し、トルク値を精密にコントロール。微細な部品でも不良や製品破損を低減。

家電製品や
PCパーツなどに使われる
定番サイズのねじを締めたい

想定ねじサイズ:M4~M5
HMシリーズ
デンソーウェーブ
HMシリーズ
画像引用元:デンソーウェーブ公式HP(https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/screwtightening/STR.html)
対応トルク参考値
1.0~4.0N・m
こんな製品におすすめ
家電/PCパーツ/自動車組み立て部品/事務機器
ココがポイント!

定番サイズのねじ締めに最適化されたビットやトルク制御で、ノートPCや樹脂製筐体でも破損リスクを抑えられる。

最大6,000rpmの高速ビットと自動ねじ供給システムにより、家電・PCパーツの量産ラインでの作業スピードが向上。

建機や
車体などに使われる
大型・高トルクねじを締めたい

想定ねじサイズ:M6~M12
THL900-EN01
エスティック
THL900-EN01
画像引用元:エスティック公式HP(https://www.estic.co.jp/products/)
対応トルク参考値
1.0~100.0N・m
こんな製品におすすめ
工作機械/産業機械/自動車のエンジン部品/航空機の機体構造部材
ココがポイント!

最大100N・mの高トルクのため、自動車のサブフレームや建機の構造材など汎用モデルでは難しい大型ねじの締結が可能。

高負荷領域でもトルク制御・ねじ締めデータの記録精度を維持でき、構造部品に求められる品質基準もクリアできる。

※1 ねじサイズについて「M0.4」と表記していますが、正式なJIS規格(JIS B0201)では「S0.4×0.1」が正確な呼び方です。本メディアでは一般的な呼称に基づき説明しています。
※2 ビットとは、ねじを締めるための先端工具のこと。スリーブは、ねじをエア吸着でピックアップするときに必要な部品のこと。
※このメディアでは、公式HPに記載されている数値や製品特性をもとに「想定ねじサイズ」と「対応トルク参考値」を定義・整理しています。実際の対応範囲の詳細については、各社のスペック表をご確認ください。

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