適したワークと
ねじサイズから探す
ネジ締め作業は打点数が多く、一つひとつの位置決めやトルク管理に時間がかかるため、生産ライン全体のボトルネックになりやすい工程です。本記事では、タクトタイムが延びる根本的な原因を分析し、対象のネジサイズに適した短縮方法や、工程の自動化に欠かせない自動ネジ締め機の具体的な選び方を解説します。
タクトタイムとは「稼働時間÷必要生産数」で求められる、顧客の需要を満たすための「目標生産ペース」です。対してサイクルタイムは、現場の設備や作業者が「1サイクルの実作業にかかる時間」を指します。
サイクルタイム(CT)がタクトタイム(TT)を上回る(CT>TT)と、生産が目標に追いつかず欠品リスクが生じます。逆にCTが短すぎる(TT>CT)と過剰在庫を抱える原因になります。ネジ締め工程は、ネジの供給・位置決め・トルク管理といった複数動作が重なるため、CTがTTを超過しやすく、ライン全体の進行を遅らせる要因になりがちです。
手作業でネジ締めを行う場合、作業者ごとに締め付けスピードやトルクのかけ方にバラツキが生じます。熟練者と非熟練者では1サイクルあたりの作業時間に明確な差が出やすく、標準時間を一定に保つのが困難です。また、反復作業による疲労や集中力の低下も、シフト後半になるほどサイクルタイムが増大する構造的な問題を引き起こします。作業者のスキルに依存する状態では、根本的な時間短縮は望めません。
ネジを所定の場所にセットするまでの「ピック&プレース」動作も、時間を消費する大きな要因です。ネジの吸着確認から移動、穴位置への正確な位置決めに至る各ステップで、わずかなタイムロスが積み重なります。
さらに、パーツフィーダー内でのネジ詰まり(ジャミング)やエア圧の変動によるチョコ停(一時停止)が頻発すると、結果的にタクトタイムを著しく落とすことになります。
多品種少量生産のラインでは、製品が変わるたびにネジの種類や締め付け条件を変更する必要があります。異なるサイズのネジに対応するためのビット交換や、トルク設定の再調整、専用治具の付け替えといった「段取り替え」に時間がかかります。
正味のネジ締め作業以外の時間(ロス時間)が増えるほど、1日あたりの実質的な稼働率が低下します。手作業での調整はミスを誘発しやすく、タクト延長の大きな要因です。
M1クラス以下の微小なネジ(小ねじ)は、作業者が指やピンセットで掴みにくく、少しの力加減で基板やハウジングを破損するリスクがあります。対策として、バキューム吸着式のドライバーを導入し、ネジのピックアップ動作を安定させることが有効です。
さらに、微細な電流制御によってトルクや角度を監視できる精密電動ドライバーを活用すれば、過締めを防ぎつつ高速な作業が可能になります。
家電やPCなどで使用されるM3〜M5程度の定番サイズは、1製品あたりの打点数が多い傾向にあります。この場合、1カ所あたりの純粋な締結スピードの向上がタクトタイム短縮に直結します。
高速回転が可能な高出力モーターや、ネジを自動でドライバー先端に送る自動ネジ供給機を連携させることで、ピックアップの手間を省きサイクルタイムを大幅に圧縮できます。
建機や自動車の車体組み立てに使われるボルトや大型ネジは、高い締め付けトルクを要求されます。これを手作業で行うと、作業者の肉体的な負担が大きく、疲労によって作業ペースが落ちやすくなります。
対策として、ナットランナーやロボットアームを導入し、力仕事を自動化・アシストすることが重要です。高トルクの締め付けと推力の制御を同期させることで、安全かつ一定のペースで作業を継続できます。
自動化機器の導入において重要なのは、単なる動作スピードだけでなく「止まらずに動き続けること」や「既存ラインとの親和性」です。ここでは選定の軸となるポイントを解説します。
いくらネジ締め動作が速くても、ネジ詰まりや空転などのエラーで設備が止まってしまえば、結果的にタクトタイムは長引きます。トルクや時間で締め付け完了を判定する機能や、斜め締め検知、エラー時に自動でやり直すリトライ制御を備えた機器を選ぶことが重要です。ポカヨケ機能によって停止リスクを最小化することが、ライン全体の稼働率向上に繋がります。
自動ネジ締め機には、多関節やスカラロボットに搭載する全自動型、省スペースな卓上型、作業者を補助する手持ちアシスト型など、さまざまな形態があります。既存ラインの設置スペースに余裕があるか、安全柵の設置が必要か、多品種対応のための段取り替えが容易かなど、現場の環境に適合するかどうかを判断軸にして適切なタイプを選定してください。
ネジ締め機メーカーは、それぞれ得意とする領域を持っています。汎用的な機器を選ぶのではなく、自社が扱うネジの径や必要なトルク帯、素材に適合した供給方式の実績があるメーカーを選びましょう。また、導入前に実機検証(PoC)が可能か、周辺機器との連携を担うシステムインテグレーター(SIer)としての対応力があるかも重要な判断材料になります。
ネジ締め工程のタクトタイムを短縮するには、単にドライバーの回転数を上げるだけでなく、ネジの供給から位置決め、段取り替え、エラーによるチョコ停を含む「工程全体のサイクルタイム」を見直すことが本質的な改善に繋がります。対象のネジサイズ・必要生産量・品種の数といった自社が抱えている課題を明確に洗い出し、現場の環境に適した自動化機器を選定しましょう。
ネジ締め機を選ぶときには、“どのサイズのねじを締めるか”が重要な判断基準です。
そこで、当メディアではねじ締結を行いたい対象製品(※以下、「ワーク」と表記)とねじサイズの2軸から、ワークに応じて適切なねじ締めができる3機種を厳選しました。ネジ締め機の特徴を比較し、自社の製造現場に合った1台を見つけてください。
スマートフォンや
車載電装品などに使われる
小ねじを締めたい

精密機器や狭小部品のねじ締めを想定した軽量・小型の構造により、細かい部品の組み立てや狭小空間での作業にも対応。
ねじ1本ごとにスリーブやビット(※2)を設計し、トルク値を精密にコントロール。微細な部品でも不良や製品破損を低減。
家電製品や
PCパーツなどに使われる
定番サイズのねじを締めたい

定番サイズのねじ締めに最適化されたビットやトルク制御で、ノートPCや樹脂製筐体でも破損リスクを抑えられる。
最大6,000rpmの高速ビットと自動ねじ供給システムにより、家電・PCパーツの量産ラインでの作業スピードが向上。
建機や
車体などに使われる
大型・高トルクねじを締めたい

最大100N・mの高トルクのため、自動車のサブフレームや建機の構造材など汎用モデルでは難しい大型ねじの締結が可能。
高負荷領域でもトルク制御・ねじ締めデータの記録精度を維持でき、構造部品に求められる品質基準もクリアできる。
※1 ねじサイズについて「M0.4」と表記していますが、正式なJIS規格(JIS B0201)では「S0.4×0.1」が正確な呼び方です。本メディアでは一般的な呼称に基づき説明しています。
※2 ビットとは、ねじを締めるための先端工具のこと。スリーブは、ねじをエア吸着でピックアップするときに必要な部品のこと。
※このメディアでは、公式HPに記載されている数値や製品特性をもとに「想定ねじサイズ」と「対応トルク参考値」を定義・整理しています。実際の対応範囲の詳細については、各社のスペック表をご確認ください。