ネジ締め工具の寿命管理とビットの摩耗対策

目次

ネジ締め工程では、ビットやドライバなどの工具が摩耗・損傷すると、ネジ頭とのかみ合わせが悪くなったり、カムアウトや締結品質のばらつきにつながったりする可能性があります。

特に自動ネジ締めでは、工具の摩耗に気付かないまま設備を連続稼働させることで、同様の異常が繰り返し発生するおそれがあります。そのため、工具が破損してから交換するのではなく、締結回数や工具の状態を確認しながら、適切なタイミングで交換するための管理方法を検討することが重要です。

本記事では、ネジ締め工具の寿命管理で発生しやすい課題と、締結回数の管理、締結データの活用、定期点検などによる対策を解説します。

ネジ締め工具の寿命管理で発生しやすい課題

ビットやドライバの交換時期が明確に管理されていない場合、工具の摩耗や損傷が締結品質に影響する可能性があります。

課題 発生しやすい事象 影響
交換タイミングが明確でない 工具の状態や作業者の判断によって交換時期が異なる 摩耗した工具を使用し続ける可能性がある
工具の摩耗に気付きにくい ビット先端の摩耗や欠けが徐々に進行する カムアウトやネジ頭の損傷につながる可能性がある
異常発生後に原因を調査する 締結不良が発生してから工具の状態を確認する 設備停止や原因調査に時間がかかる場合がある
工具の使用履歴を把握できない いつ交換した工具なのか、何回使用したのかを確認できない 適切な交換時期を設定しにくい
工具と締結データを関連付けていない 締結結果と使用した工具の状態を比較できない 不良発生時の原因分析が難しくなる場合がある

ただし、工具の寿命は締結回数だけで決まるものではありません。ネジの材質や形状、締結トルク、回転速度、工具とネジ頭の適合性などによって摩耗の進み方が異なるため、実際の使用条件に合わせて管理方法を設定する必要があります。

対策① 締結回数を記録して交換時期の目安を設定する

工具寿命を管理する基本的な方法の一つが、ビットやドライバを使用した締結回数を記録する方法です。

例えば、実際の生産条件で一定期間使用した工具の摩耗状態や締結品質を確認し、交換時期の目安となる締結回数を設定します。

締結回数管理で確認したいポイント

締結回数は交換時期を判断するための一つの目安ですが、設定した回数に達するまで工具を必ず使用し続ける必要があるわけではありません。定期的な外観確認や締結状態の確認と組み合わせることで、より適切な寿命管理を行いやすくなります。

対策② 締結データを活用して異常の兆候を確認する

トルクや締結角度などのデータを取得できる設備では、締結結果の変化を確認することで、通常とは異なる状態が発生していないかを把握できる場合があります。

例えば、同じ製品・同じ締結条件で取得したデータを継続的に確認し、通常の範囲から外れる変化が発生していないかを確認する方法があります。

確認できるデータの例 活用方法
締結トルク 設定した範囲内で締結されているかを確認する
締結角度 通常の締結パターンから大きく外れていないかを確認する
トルクの変化 締結中の挙動に通常と異なる変化がないかを確認する
OK/NGの発生状況 特定の工具や設備で異常が集中していないかを確認する

ただし、締結データの変化だけからビットの摩耗や破損を特定できるとは限りません。ネジやワークのばらつき、位置ずれ、工具の姿勢、締結条件など、複数の要因によってデータが変化する可能性があります。

そのため、締結データは工具寿命を直接判定するものとしてではなく、異常の兆候を確認するための情報の一つとして活用し、必要に応じて工具の状態確認につなげることが重要です。

対策③ 定期点検と限度見本を活用して管理する

締結回数や締結データの確認に加えて、工具自体の状態を定期的に目視や測定で確認することも重要です。特にビットでは、先端部の摩耗や変形、欠けなどによってネジ頭との適合性が変化し、カムアウトなどの原因となります。

工具の摩耗には、回転速度やトルクだけでなく、ネジを押し付ける「推力(スラスト荷重)」も影響します。推力が締結条件に適していない場合は、ビットとネジ頭のかみ合わせや摩耗状態に影響する可能性があるため、設備側の設定もあわせて確認することが重要です。

また、摩耗の判断基準を明確にするためには、新品の工具と、自社で設定した交換基準に達した状態の工具を「限度見本」として用意する方法もあります。実際の工具と比較できるようにすることで、作業者による判断のばらつきを抑え、交換時期を判断しやすくなります。

より高度な寿命管理を検討する場合

生産設備の構成によっては、締結データを設備監視システムや生産管理システムと連携し、工具の使用状況を継続的に管理する方法もあります。

また、蓄積したデータを分析し、通常とは異なる傾向を検出する仕組みを導入することも考えられます。ただし、こうした方法の実現方法や分析精度は、取得できるデータの種類や量、設備構成、使用するシステムによって異なります。

そのため、いきなり高度な分析システムを導入するのではなく、まずは以下のような基本的な管理から始める方法もあります。

  1. 工具の使用開始日・交換日を記録する
  2. 締結回数を把握する
  3. 定期的に工具の状態を確認する
  4. 締結不良と工具の使用履歴を比較する
  5. 必要に応じて締結データの分析を行う

このように段階的にデータを蓄積することで、自社の締結条件に合った工具寿命の管理基準を検討しやすくなります。

自動化前に確認したいポイント

ネジ締め工具の寿命管理を自動化・標準化する前には、工具だけでなく、実際の締結条件も含めて確認する必要があります。

工具寿命を「何本締めたら必ず交換」と一律に決めるのではなく、実際の締結条件と工具の摩耗状態を確認しながら、自社の工程に適した管理基準を設定することが重要です。

編集チームまとめ

ネジ締め工具の寿命管理では、ビットやドライバが破損してから交換するのではなく、締結回数や使用履歴、工具の状態を継続的に確認することが重要です。

まずは締結回数や交換履歴を記録し、定期点検を行う方法から始めることで、工具の摩耗と締結不良の関係を把握しやすくなります。

さらに、トルクや締結角度などのデータを取得できる場合は、それらを活用して通常とは異なる締結傾向を確認する方法も検討できます。工具の状態、締結条件、締結データを組み合わせて管理することで、ネジ締め工程の品質維持と、突発的な工具トラブルの低減につなげることが重要です。

ワークとねじサイズから見つかる!
おすすめのネジ締め機3選

ネジ締め機を選ぶときには、“どのサイズのねじを締めるか”が重要な判断基準です。
そこで、当メディアではねじ締結を行いたい対象製品(※以下、「ワーク」と表記)とねじサイズの2軸から、ワークに応じて適切なねじ締めができる3機種を厳選しました。ネジ締め機の特徴を比較し、自社の製造現場に合った1台を見つけてください。

スマートフォンや
車載電装品などに使われる
小ねじを締めたい

想定ねじサイズ:M0.4~M3(※1)
ABLシリーズ
日本テクナート
ABLシリーズ
画像引用元:日本テクナート公式HP(https://www.technart.com/)
対応トルク参考値
0.002~13.2N・m
こんな製品におすすめ
スマートフォン/車載電装品/医療機器/半導体部品
ココがポイント!

精密機器や狭小部品のねじ締めを想定した軽量・小型の構造により、細かい部品の組み立てや狭小空間での作業にも対応。

ねじ1本ごとにスリーブやビット(※2)を設計し、トルク値を精密にコントロール。微細な部品でも不良や製品破損を低減。

家電製品や
PCパーツなどに使われる
定番サイズのねじを締めたい

想定ねじサイズ:M4~M5
HMシリーズ
デンソーウェーブ
HMシリーズ
画像引用元:デンソーウェーブ公式HP(https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/screwtightening/STR.html)
対応トルク参考値
1.0~4.0N・m
こんな製品におすすめ
家電/PCパーツ/自動車組み立て部品/事務機器
ココがポイント!

定番サイズのねじ締めに最適化されたビットやトルク制御で、ノートPCや樹脂製筐体でも破損リスクを抑えられる。

最大6,000rpmの高速ビットと自動ねじ供給システムにより、家電・PCパーツの量産ラインでの作業スピードが向上。

建機や
車体などに使われる
大型・高トルクねじを締めたい

想定ねじサイズ:M6~M12
THL900-EN01
エスティック
THL900-EN01
画像引用元:エスティック公式HP(https://www.estic.co.jp/products/)
対応トルク参考値
1.0~100.0N・m
こんな製品におすすめ
工作機械/産業機械/自動車のエンジン部品/航空機の機体構造部材
ココがポイント!

最大100N・mの高トルクのため、自動車のサブフレームや建機の構造材など汎用モデルでは難しい大型ねじの締結が可能。

高負荷領域でもトルク制御・ねじ締めデータの記録精度を維持でき、構造部品に求められる品質基準もクリアできる。

※1 ねじサイズについて「M0.4」と表記していますが、正式なJIS規格(JIS B0201)では「S0.4×0.1」が正確な呼び方です。本メディアでは一般的な呼称に基づき説明しています。
※2 ビットとは、ねじを締めるための先端工具のこと。スリーブは、ねじをエア吸着でピックアップするときに必要な部品のこと。
※このメディアでは、公式HPに記載されている数値や製品特性をもとに「想定ねじサイズ」と「対応トルク参考値」を定義・整理しています。実際の対応範囲の詳細については、各社のスペック表をご確認ください。

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