多品種少量生産でネジ締めを自動化するには

目次

多品種少量生産では、品種の切り替えに伴って治具や締結条件、ネジの種類などを変更する必要があるため、ネジ締め工程の自動化が難しいと考えられることがあります。

一方で、段取り替えの方法やプログラム管理、治具設計を工夫することで、多品種少量生産でも自動化できる工程があります。重要なのは、単にネジ締め作業を自動化するだけでなく、品種切り替えにかかる作業や時間を含めて設備を設計することです。

本記事では、多品種少量生産でネジ締めを自動化する際に発生しやすい課題と、段取り替えを短縮するための対策を解説します。

多品種少量生産でネジ締めを自動化する際の課題

多品種少量生産では、製品やネジの仕様が変わるたびに設備の設定変更や治具交換が必要になる場合があります。

課題 発生しやすい事象 影響
段取り替え時間の増加 品種の切り替えに伴い、治具やビット、締結条件などを変更する 設備の停止時間が増え、生産に使える時間が減少する
治具・工具の多品種化 製品形状やネジ仕様に応じて専用の治具やビットが必要になる 設備費や保管・管理の負担が増える
締結条件の切替ミス 品種ごとに異なるトルクや回転速度などの設定変更が必要になる 設定ミスによる締結不良が発生する可能性がある
投資効果の判断が難しい 1品種あたりの生産量が少なく、設備の稼働時間が限られる 設備投資の効果を単純な省人化だけで評価しにくい
作業の属人化 複数の製品に対応するため、段取りや締結作業に経験が必要になる 担当者によって作業時間や品質に差が生じる可能性がある

対策① 段取り替え作業を分解して短縮する

多品種少量生産で自動化を検討する際は、品種切り替え時に発生している作業を細かく分け、それぞれを短縮または削減できるかを検討することが重要です。

品種に応じたプログラム切替

バーコードや2次元コードなどを利用して品種を識別し、あらかじめ登録したロボットや締結装置のプログラムを切り替える仕組みを構築する方法があります。

このような仕組みを導入することで、作業者が品種ごとに設定値を手入力する工程を減らせる場合があります。

治具の共通化・交換方式の工夫

製品ごとに完全に異なる治具を用意するのではなく、共通ベースに交換部品やパレットを取り付ける構成にすることで、治具の変更作業を簡略化できる場合があります。

ただし、短縮できる時間は治具の構造や製品の大きさ、位置決め方法によって異なります。多品種少量生産向けの設備では、ワークの切り替えを短時間で行える治具や交換機構を検討することが重要です。

ビットや工具の交換

製品によってネジサイズやネジ頭の形状が異なる場合は、ビットの交換が必要になることがあります。交換作業を自動化するATC(オートツールチェンジャー)を導入する方法もありますが、必要な設備構成や投資額は工程によって異なります。

そのため、品種数や切り替え頻度によっては、自動交換だけでなく、工具をワンタッチで交換できる構造にするなど、段取り作業そのものを簡略化する方法も選択肢になります。

ネジ供給装置の仕様を見直す

ネジの種類が複数ある場合は、品種ごとに供給装置を変更する必要があることがあります。一方で、ネジのサイズや形状などの条件によっては、複数の品種で共通の供給方式を採用できる場合もあります。

ただし、すべてのネジを同じ供給装置で扱えるわけではありません。使用するネジのサイズや形状、首下長さなどによって対応可否が異なるため、供給装置の仕様を確認したうえで検討する必要があります。

対策② ロボットを活用して品種変更に対応する

複数の製品や締結位置に対応する必要がある場合は、ネジ締めユニットを搭載したロボットを活用する方法があります。

ロボットは、プログラムやエンドエフェクタ、周辺設備の構成を変更することで、製品の切り替えや工程変更に対応しやすい点が特長です。

協働ロボットの活用

協働ロボットは、多品種少量生産における自動化の選択肢の一つです。比較的柔軟なレイアウト変更やプログラム変更に対応できるため、製品の切り替えが発生する工程で活用されています。

ただし、協働ロボットだからといって必ず安全柵が不要になるわけではありません。ロボットシステム全体についてリスクアセスメントを行い、必要な安全対策を検討する必要があります。危険が生じるおそれがある場合には、必要な措置を講じることが求められています。

締結条件や作業プログラムの管理

品種ごとに異なるトルク、回転速度、締結本数、締結順序などを管理する場合は、品種ごとの締結条件をあらかじめ登録し、適切なプログラムを呼び出せるようにする方法があります。

管理方法は、設備内のコントローラーで行う構成のほか、工場の生産管理システムやネットワークと連携する構成などがあります。クラウドを利用するかどうかは、既存システムやセキュリティ要件、管理対象の範囲に応じて検討する必要があります。

対策③ 投資効果を生産量だけで判断しない

多品種少量生産では、1品種あたりの生産量だけを基準にすると、自動化設備の投資効果を評価しにくい場合があります。

そのため、設備導入を検討する際は、生産数量だけでなく、段取り時間や品質、作業者の負担なども含めて効果を確認することが重要です。

これらを可能な範囲で数値化し、設備費用や運用コストと比較することで、自社の生産条件に合った投資判断を行いやすくなります。

自動化前に確認したいポイント

多品種少量生産でネジ締めを自動化する場合は、設備の仕様を決める前に、現在の段取り作業を整理することが重要です。

特に、多品種少量生産では「ネジを自動で締められるか」だけではなく、品種を切り替える際にどの作業が残るのかを確認することが重要です。段取り替えに時間がかかる場合は、自動ネジ締め機の導入効果を十分に得にくくなる可能性があります。

編集チームまとめ

多品種少量生産におけるネジ締め自動化では、ネジ締め作業そのものだけでなく、品種切り替えに伴う段取り替えをどこまで短縮できるかが重要です。

プログラムの切り替え、治具の共通化や交換方法の工夫、工具交換、ネジ供給方法の見直しなどを組み合わせることで、多品種少量生産でも自動化を検討できる場合があります。

また、協働ロボットを含むロボットシステムは選択肢の一つですが、すべての工程に適しているわけではありません。製品数や切り替え頻度、段取り時間、求められる締結品質を整理したうえで、自社の生産条件に合った設備構成を検討することが重要です。

ワークとねじサイズから見つかる!
おすすめのネジ締め機3選

ネジ締め機を選ぶときには、“どのサイズのねじを締めるか”が重要な判断基準です。
そこで、当メディアではねじ締結を行いたい対象製品(※以下、「ワーク」と表記)とねじサイズの2軸から、ワークに応じて適切なねじ締めができる3機種を厳選しました。ネジ締め機の特徴を比較し、自社の製造現場に合った1台を見つけてください。

スマートフォンや
車載電装品などに使われる
小ねじを締めたい

想定ねじサイズ:M0.4~M3(※1)
ABLシリーズ
日本テクナート
ABLシリーズ
画像引用元:日本テクナート公式HP(https://www.technart.com/)
対応トルク参考値
0.002~13.2N・m
こんな製品におすすめ
スマートフォン/車載電装品/医療機器/半導体部品
ココがポイント!

精密機器や狭小部品のねじ締めを想定した軽量・小型の構造により、細かい部品の組み立てや狭小空間での作業にも対応。

ねじ1本ごとにスリーブやビット(※2)を設計し、トルク値を精密にコントロール。微細な部品でも不良や製品破損を低減。

家電製品や
PCパーツなどに使われる
定番サイズのねじを締めたい

想定ねじサイズ:M4~M5
HMシリーズ
デンソーウェーブ
HMシリーズ
画像引用元:デンソーウェーブ公式HP(https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/screwtightening/STR.html)
対応トルク参考値
1.0~4.0N・m
こんな製品におすすめ
家電/PCパーツ/自動車組み立て部品/事務機器
ココがポイント!

定番サイズのねじ締めに最適化されたビットやトルク制御で、ノートPCや樹脂製筐体でも破損リスクを抑えられる。

最大6,000rpmの高速ビットと自動ねじ供給システムにより、家電・PCパーツの量産ラインでの作業スピードが向上。

建機や
車体などに使われる
大型・高トルクねじを締めたい

想定ねじサイズ:M6~M12
THL900-EN01
エスティック
THL900-EN01
画像引用元:エスティック公式HP(https://www.estic.co.jp/products/)
対応トルク参考値
1.0~100.0N・m
こんな製品におすすめ
工作機械/産業機械/自動車のエンジン部品/航空機の機体構造部材
ココがポイント!

最大100N・mの高トルクのため、自動車のサブフレームや建機の構造材など汎用モデルでは難しい大型ねじの締結が可能。

高負荷領域でもトルク制御・ねじ締めデータの記録精度を維持でき、構造部品に求められる品質基準もクリアできる。

※1 ねじサイズについて「M0.4」と表記していますが、正式なJIS規格(JIS B0201)では「S0.4×0.1」が正確な呼び方です。本メディアでは一般的な呼称に基づき説明しています。
※2 ビットとは、ねじを締めるための先端工具のこと。スリーブは、ねじをエア吸着でピックアップするときに必要な部品のこと。
※このメディアでは、公式HPに記載されている数値や製品特性をもとに「想定ねじサイズ」と「対応トルク参考値」を定義・整理しています。実際の対応範囲の詳細については、各社のスペック表をご確認ください。

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